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からだの健康、お口から

厚生労働省

iihaコラム

健康な歯で理想の笑顔に!
若い時から身につけたい「お口のケア」の極意とは?

「口元の美しさ」に注目

長いマスク生活から日常を取り戻しつつある今、より注目されるのが口元の美しさではないでしょうか? 引き締まった口元からのぞく健康的な歯。笑顔は人と人とをひきつけ、人生を豊かにする重要なコミュニケーションツールの一つです。口を開けたら歯に汚れがついていた、というのでは、折角の笑顔も台無しです。

10~20歳代の習慣がカギ

日本歯科衛生学会幹事で、徳島大学大学院医歯薬学研究部の藤原奈津美教授(写真)は、「今の時代、お口の健康を保つには10歳代後半から20歳代にかけ、若い時からのお口のケアの習慣づくりが大事です」と話します。 近年、子どものむし歯の罹患率は年々減少傾向にあります。「砂糖を含んだ飲食物をだらだらと食べない」や「フッ素配合歯磨剤を使用する」など、保護者のむし歯予防についての正しい知識が普及したためではないかとみられています。

◆12歳の永久歯のうち、むし歯になったことのある歯の平均本数(治療済みも含む)。 1984年度の 4.75本から2021年度の 0.63 本にまで大きく減少している。

(文部科学省 学校保健統計調査より)

若者世代「3人に1人はかかりつけ歯科医がいない」

ところが、「思春期以降、本人の意思で生活行動を選択するようになると、この習慣がいったん途切れてしまうことが少なくありません」と藤原教授。日本歯科医師会が2022年に実施した「歯科医療に関する一般生活者意識調査」でも、10~20歳代の6割以上が歯の定期チェックのための受診をしておらず、3人に1人はかかりつけ歯科医がいないと回答しており、他の年代に比べて低い数値にとどまっています。この間にむし歯のみならず歯周病も進行していく可能性があります。

◆歯科医療機関で定期チェックを受けている人の年代別割合
(日本歯科医師会 2022年「歯科医療に関する生活者意識調査」より)

※調査対象は15~79歳の10,000人。10歳代は15~19歳の数値。

世界は予防にシフト

世界保健機関(WHO)は、口の中の病気のほとんどは予防可能であるとして、予防の大切さを訴えています。例えば、むし歯が大きくなると、歯を削って詰め物をする治療を受けますが、その詰め物の周りからむし歯が再発することもあります。すると、さらに周囲を削ることになり、その繰り返しでどんどん歯を失っていきます。口のなかの細菌(歯周病菌)によって起きる歯周病では、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が破壊され、元に戻ることはありません。まず、むし歯をつくらない、歯周病にならないことが最善の方法なのです。

予防に不可欠な2つの要素

では、具体的にどうしたら良いのでしょうか? 大切なのは、歯みがきなどの日々のセルフケアと、定期的な歯科でのチェックです。いくら毎日丁寧に歯を磨いても、どうしてもうまく磨けない部分が残ります。歯科では口の中の状態をチェックした後、歯科衛生士に歯みがきの方法を教わったり、専門の器械で歯のクリーニングを受けたりすることができます。藤原教授によると、歯みがきのテクニック、口の中の細菌バランス(細菌叢(そう))やむし歯や歯周病のリスクは個人差があるため、どの程度の間隔で受診すべきかは人によって異なるそうです。いずれにしても、「歯科は歯が痛くなったら受診するもの」と思っている人がいたら、「むし歯や歯周病にならないように受診するもの」と考えを変える必要がありそうです。

セルフケアのコツは

もちろん、日々のケアも重要です。歯みがきは毎食後や就寝前に、むし歯予防効果のあるフッ素入りの歯磨剤を使って行います。奥歯の溝にブラシをあて細かく動かして磨きます。歯と歯ぐきの境目にもブラシをあてて小さく動かします(=イラスト)。

◆歯ブラシの当て方

成人のむし歯の多くは歯と歯の間から発生します。デンタルフロスはブラシで届かない歯と歯の間の歯垢を取るのに大変効果的です。デンタルフロスを歯と歯の間に入れ、歯ぐきを傷つけないようにしながら歯の面に沿って動かします。

◆デンタルフロスの使い方

ブラッシングもフロスも歯垢をかき出すようなイメージで行うのがポイントです。

口臭予防に舌の清掃も

藤原教授によると、口臭は胃などから出るニオイで起きることもありますが、大半は口の中の細菌が代謝して放つ悪臭物質が原因だそうです。歯みがきに加え、舌の清掃は口臭予防に有効な手段です。舌の奥から手前に清掃します。力を入れすぎないよう優しく行います。舌専用ブラシを使うことも効果的です。

◆舌ブラシを使った舌の清掃方法

歯を大切にする若者に聞く

実際に歯を大切にしている若い人たちはどんな実践をしているのでしょうか?
東京医科歯科大学で口腔保健衛生学を専攻する学生さんにお話を聞きました。
4年生の徳丸慶安さんが大学で学んでなるほどと思ったのは清掃用具の使い方。「フロスを使う時は歯の面にしっかり沿うように動かすときれいにとれる」とか、「歯を磨いた後は少量の水で一度だけすすぐ」といった具合です。以前は何度も口をすすいでいましたが、それでは歯磨剤に入ったフッ素が口の中にとどまらず効果が見込めないと気づいたそうです。
檜作真理子さんが楽しんでいるのは、自分に合った用具探し。歯みがき粉でも、むし歯を予防するためのフッ化物濃度の高いものや、ホワイトニング効果の高いものなど使い分けをしているそうです。「健康を維持するためにトレーニングをするように、食べること、しゃべることを楽しむためには口のケアにも時間をとることが大切だと思います」と答えてくれた方もいらっしゃいました。

相談できる歯科衛生士に

彼らが目指しているのは歯科衛生士という職業です。歯科医院などで専用の器械を使って歯垢や歯石の除去をしたり、セルフケアの方法についてアドバイスしたりする業務を担っています。大学では専門的な技能を習得する実習のほか、話し方、話の聴き方を学ぶ授業もあり、「患者さんにとって身近な存在になりたい」と徳丸さんは話します。
スキンケアやヘアケアと同様に、お口の健康も日頃のお手入れが大切です。「歯医者さん、しばらく行っていないなぁ」という人はぜひ一度受診してチェックを受けてみてはいかがでしょうか。

写真説明:歯科衛生士の技能を習得するため、大学で行う臨床実習(東京医科歯科大学提供)

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