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からだの健康、お口から

厚生労働省

iihaコラム

歯周病は万病のもと!?
お口のケアで身体いつまでも若々しく

糖尿病、がん、認知症も?

お口のケアが全身の健康にも影響していることをご存じですか? 日本人の半数は中等度以上の歯周病にかかっているとされていますが、近年、その歯周病が糖尿病や大腸がん、認知症などさまざまな身体の病気と関係があることを示す報告が相次いでいます。また、歯周病やむし歯によって歯を失ったままにしておくと体の筋力バランスが崩れ、転倒しやすくなることもわかってきました。今回は口や歯の病気と全身の関係について、専門家に聞きました。

そもそも歯周病とは?

歯をよく磨かずに歯垢(プラーク)がたまってしまった、という経験は誰にもあると思います。歯垢というのは口の中の細菌のかたまりで、歯周病はこの細菌が引き起こす病気です。
初期段階では、歯と歯ぐきのすき間(ポケット)に歯垢が入り込み、歯ぐきが炎症を起こします。そのままにしておくと、歯の周囲に硬い歯石となって付着し、歯周ポケットも深くなります。やがて歯を支える骨(歯槽骨)が溶けて歯がグラグラし、自然に抜け落ちてしまいます。
最初はほとんど自覚症状がなく、気づいた時には進行して取り返しがつかない。令和4年の歯科疾患実態調査では、日本人の2人に1人(47.9%)は歯周ポケットが4mm以上の中等度以上の歯周病にかかっており、その割合は年齢と共に増加していることがわかりました。ありふれた病気なのですが、歯を失う原因の1位にもなっている大変怖い病気でもあるのです。

◇歯周病の進み方(イメージ)

糖尿病を悪化させる

歯周病の影響は、お口の中だけにとどまりません。日本歯周病学会理事で、歯周病と全身疾患の関係に詳しい慶應義塾大学歯科・口腔外科の中川種昭教授によると、歯周病になると口の中の細菌や炎症物質が歯周ポケットから血管に入り込んだり、唾液と一緒にのみ込まれたりすることで全身に広がっていくそうです。
歯周病との関連が早くから指摘されているのが糖尿病です。歯周病によって生じた炎症物質が血管に入り、インスリンというホルモンの働きを鈍らせるため、糖尿病を発症・進行させることが明らかになっています。歯周病を治療したことで、糖尿病が改善したという研究もあるそうです。

◇歯周病が糖尿病を引き起こす仕組み

※公益財団法人8020推進財団「からだの健康は歯とお口から~歯周病対策で健康力アップ」のイラストを基に作成

血管や腸の中に歯周病菌が…

動脈硬化を起こした血管の内壁に歯周病菌が見つかったという報告もあります。歯周病菌が血管に入り込むと炎症を引き起こす物質が集まり、血管が狭く硬くなります。血液の流れが悪くなり、心筋梗塞や脳卒中になるリスクが高まるので注意が必要です。
大腸がん患者の腸にも歯周病菌の一種がいたことが判明しました。私たちは1日に1~1.5Lの唾液をのみ込んでおり、口の中の細菌も一緒に消化管に流れ込んでいます。大部分は強酸性の胃液によって死滅しますが、生き残った一部の細菌が腸まで到達すると考えられています。この細菌は、大腸がんの発がんや進行にも関係するとされ、研究の進展が待たれます。
アルツハイマー病との関係も注目を集めています。アルツハイマー病の患者の脳脊髄液から歯周病菌の一種が検出され、菌が出す毒素が脳内に存在したことを確認したという報告もあります。

◇歯周病との関連が報告されている主な病気

通院で歯ぐきがピンクに

歯周病の治療は、歯垢(プラーク)や歯石を取り除き、口の中を清潔に保つことが基本です。歯科医院を受診し、専用の器具できれいにしてもらうと同時に、自宅では毎日歯ブラシやフロスを使って歯垢がたまるのを防ぐことが大切です。
熊本県で患者の診療にあたっている日本歯科医師会の伊藤明彦常務理事は「定期的に歯科医院を受診し、お口の状態を清潔に保つことで、赤く腫れた歯ぐきがピンク色に戻るなど、改善を実感できるようになります。歯ぐきが腫れている、出血がある、むずがゆい、歯が動き出したなどの症状があれば、すぐに歯科医院を受診してほしい」と話しています。
歯周病の初期段階では特に自覚症状がないため、知らない間に進行してしまうこともあります。多くの自治体では住民を対象にした歯周病検診を実施していますので、ぜひ活用してみてください。

◇歯周病の症状
以下の症状が一つでも当てはまれば歯周病の可能性があります。早めに歯科医院を受診して、検査をしてもらいましょう。

※公益財団法人8020推進財団「からだの健康は歯とお口から~歯周病対策で健康力アップ」のイラストを基に作成

■失われた骨を取り戻す再生療法

歯周病が進行して、歯槽骨などの歯周組織が失われた場合は再生療法も選択肢になります。歯ぐきを切開して、歯根の表面に付着した歯垢や歯石をきれいに取り除いた後、歯槽骨に再生を促す薬剤を塗っていきます。程度が重い場合は、骨を再生する足場となる人工骨も入れることがあります。
慶應義塾大学では、新たな再生医療として骨の細胞に変化する「間葉系幹細胞」の研究も実施しています。中川教授は「今後、再生医療の選択肢は広がり、より良い治療法が定着する可能性は高いと思います。けれども、本当に大事なのは予防です。かかりつけの歯科医院を持ち、定期的なチェックで早期発見を心がけてください」と話しています。

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