iihaコラム
自分に合った歯ブラシを選ぶコツ!
~みがき方が選択のポイント~
東京歯科大学衛生学講座 客員教授
高柳篤史
ドラッグストアに行くと色々な歯ブラシが並んでいて、どれを選んだらいいのか迷ったことはありませんか。自分のみがき方に合った歯ブラシ選びのコツをご紹介します。
歯ブラシには二つの役割が求められます。ひとつ目の役割は、「歯に付着した歯垢を短時間で効率的に落とすこと」。もう一つは「歯の溝や歯と歯の間など、口の中の狭い所までしっかりと毛先が届き、隅々まで磨けること」です。しかし、この二つの役割を1本の歯ブラシで十分に果たすのは難しく、例えば、小さい歯ブラシは狭い所まで毛先が届きますが、短時間で歯垢を落とすのには不向きです。そのため、自分に合った歯ブラシを選ぶ際には、この二つの役割のバランスをどう取るかを考えることが大切です。
歯みがきは、歯ブラシをペンを持つように軽く握り、毛先を歯面にあわせて少し角度をつけて小刻みに丁寧に時間をかけてブラッシングするのが理想的とされています。
しかし、子供から高齢者までのすべての方が、理想的な歯みがきを毎日続けられるわけではありません。みがく時間がないという方もいるでしょうし、歯ブラシをうまく動かすことが苦手という方もいらっしゃいます。そのため、ひとり一人の歯みがきにかける時間やみがき方といった、生活スタイルや癖(くせ)に合った歯ブラシ選びが重要になってきます。
例えば、歯をみがく時間が短い人は、清掃効率の良い大きめの歯ブラシを選ぶといいでしょう。3分以上かけてじっくりと理想的な歯みがきができる方は、口の中で動かしやすいように、小型のものがいいでしょう。(※1)
また、歯みがきでむし歯予防効果を得るためには、フッ素配合の歯みがき剤を使う必要がありますが、効果を十分に得るためには以下のようなことが大切です。関係学会によれば、フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法として、①濃度は1400~1500ppm②量は長さ1.5~2センチ程度(6歳以上)③歯みがき後のすすぎは少量の水で1回程度に留める等のポイントが示されています。(※2)また、フッ化物を歯面に十分に留めるために、2分以上のブラッシングが望ましいとされています。(※3)
歯みがきが口の中を健康に保つカギを握っています。自分の歯みがきのスタイルを知って、楽しく効果的に歯みがきを続けられる歯ブラシを選ぶといいでしょう。そして、歯科医院での定期的な歯のケアと合わせて生涯、歯の健康を保ちましょう。
参考文献
(※1) 高柳篤史,歯ブラシを科学する~歯ブラシの形態と物理的特性~, 日本歯科医師会雑誌, vol 70, 19~27, 2017
(※2) 「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/news/2023/news_230106.pdf
(※3) Zero DT, Marinho VC, Phantumvanit P:Effective use of self-care fluoride administration in Asia. Adv Dent Res, 24(1):16 〜21, 2012.