iihaコラム
「お口の健康を意識した生活」
=「全身の健康を維持する生活」
目白大学短期大学部
歯科衛生学科専任講師
鈴木誠太郎
食習慣と歯の健康の間に関係があることはよく知られています。間食や甘い物の取り過ぎは、むし歯のリスクを高め、チーズは、むし歯菌によって歯から溶けだしたカルシウムやリン酸を、再び歯に沈着させるのを助けるとされています。
こうした歯の健康に関係する食習慣は、がんや糖尿病といった他の生活習慣病の発病や悪化の要因になることもあり、砂糖の取り過ぎは血糖値を上げて糖尿病のリスクを高めます。
最近では、こういった病気を引き起こす生活習慣に注目して、糖尿病や心臓病、高血圧などの生活習慣病を個別に予防するより、運動不足や喫煙、飲酒といった共通する危険因子(リスクファクター)を改善していく方が効率的という考え方(コモンリスクファクターアプローチ)が提唱されるようになりました。歯周病は「口の病気」ですが、喫煙などの生活習慣が深く関わっていることが明らかになってきたことから、生活習慣病のひとつと考えられるようになり、近年では、歯科健診でも生活指導が行われています。
また、生活習慣病には、別の病気を悪化させるなど相互に影響しあうケースがあることもわかってきました。例えば、歯周病は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、神経障害、心疾患、末梢血管障害に加えて、「第6の糖尿病の合併症」とされており、糖尿病によって歯肉の炎症が悪化することで、歯周病が進行しやすくなるという関係が指摘されています。
このように、歯周病と糖尿病は別々の病気であるように思われますが、実は互いに影響しあっているのです。だから、この二つの病気に共通する危険因子となる生活習慣を改善することは、予防や治療の面で非常に効果的なのです。
お口の健康を持続するには、歯みがきなどで口の中を衛生的な状態を保つだけでなく、食生活の見直しや禁煙など生活習慣の改善も大切な要素となります。また、歯の健康を保つための行動は、生活習慣を改善することにつながり、結果として全身の健康増進にもつながっていくのです。

※コモンリスクアプローチの概念