意外と知らない“むし歯”について 【後編】
「歯の健康だけで元気で長生きできる生活を維持することはできませんが、歯の健康抜きでも元気で長生きできる生活はかないません」と葭原教授は指摘します。
後編では、むし歯の進行についてより専門的に説明します。前編でお話ししたように、「脱灰(だっかい)」と「再石灰化(さいせっかいか)」のバランスが崩れ、歯からミネラルが溶け出す脱灰が優勢になったときにむし歯の発症が始まります(下図CO)。さらに脱灰が進むと、歯の表面のエナメル質に穴(う窩)があき(C1)、その後、歯の内面にある象牙質にまでむし歯が及ぶと、場合によっては痛みが生じるようになります(C2)。そのままむし歯が進行して象牙質が崩壊すると、歯の神経(歯髄)や血管のある部分にまでむし歯が達します。こうなると、耐えがたい痛みが出たり、口の中の細菌が血液中に侵入できるようになったりします。さらには、やがて神経が死んで細菌が繁殖し、歯根の先に膿瘍ができてしまいます(C3)。そして、最終的には歯冠が崩壊し、歯根だけが残った状態となります(C4)。この段階に至ると、多くの場合、抜歯が必要になります。
また、上述したように、むし歯の進行が進むと、歯そのものが溶けたり崩壊したりするだけでなく、血管に口の中の細菌が侵入するリスクも高まります。
そのため、たとえば、心臓病がある方では、血管から入った口の中の細菌が心臓や血管に細菌の塊を作り、“感染性心内膜炎”という命の危険にもつながる重篤な疾患を引き起こすこともあります。
このように、むし歯の放置は痛みや抜歯につながるだけでなく、全身の病と関係することもあるので、予防が大事なのです。
特にCOの段階であれば、まだ穴があく前なので、適切な処置によって再石灰化を促し、健全な状態に戻すことができます。
自宅での歯みがきなどの日々のホームケアだけでなく、定期的に歯科健診・プロフェッショナルケアを受けることで、むし歯の予防や早期発見につなげましょう。




